コロナ禍の今とリンクする内容なので久々に読み返してみた。
同じシリーズの「犬は勘定に入れません」を先に読んでたのだけど、出版された順番としては逆。
これが"オックスフォード大史学部シリーズ"の長編作品としては最初の作品になるんだね。
史学生キヴリンをダンワージー先生たちが中世にタイムトラベルさせるというのが基本の物語。
「犬は~」もそうだったけど序盤はなかなか話が進まなくてじれったいんだけど、現代(っていっても2050年の近未来)パートで正体不明のウィルスが流行し始め、さらに中世に着いたキヴリンが謎の病に倒れたあたりから徐々に話が動き始める。
そしてキブリンの病は治ったものの、実は彼女がいるのが黒死病が蔓延する時代だったことが判明するあたりからは本をめくる手が止まらず一気読みしちゃったよ。
ジャンルとしてはSFになるのだけど、歴史小説的な面が強く、中世イングランドの不衛生な生活様式だったり、伝染病に対して無知な村人などの姿がリアルに描かれていて読み応えたっぷり。
キヴリンが助けられる一家(アグネスのわがまま娘っぷりとか最高)や心優しいローシュ神父などのキャラクターもとっても魅力的。
だからこそ彼らが次々に病に侵されていくのが辛くて悲しい。(ペストの症状めっちゃ怖いし)
どうすることも出来ないキヴリンのもどかしさや絶望感が伝わってきて切なくなってくる。
そしてキヴリンのことを神が遣わした聖人だと思っていたローシュ神父の想いが胸を打ちます。
一方現代パートでも感染者が増えはじめ、町は隔離され、物資が不足し始める。
コロナ禍の今読むとこれがけっこうリアル。
トイレットペーパー不足を心配するフィンチだったり、モテモテなウィリアムだったり、そんなウィリアムを溺愛する母親ミセス・ギャドスンだったり癖の強いキャラが多くて中世パートよりは楽観的だけど、事態は徐々に悪化していく。
友人で医師のメアリーを亡くし、さらにはキヴリンを救えないダンワージー先生の無力感。
そんな中、メアリーの甥っ子コリンの健気さと行動力がダンワージー先生、そしてギヴリンを救う。
悲しい物語だったけど、ラストは感動、そして凄くほっとしたなぁ。
次は史学部シリーズ第3弾、これよりもさらに長い「ブラックアウト」&「オール・クリア」を再読しよう。

ドゥームズデイ・ブック(上) - コニー ウィリス, 大森 望

ドゥームズデイ・ブック(下) - コニー ウィリス, 大森 望
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